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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)1929号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人高垣憲臣上告趣意について。

所論判示第二事実の日時に關する原審の認定は、原審がその認定資料とした原判決擧示の證據(被告人の原審公判廷における判示同趣旨の供述)に照らしこれを肯認するに難くないのである。所論は原審が採用しなかったと認められる證據に基ずく立論であり、結局事実審である原審の自由裁量に属する證據の取捨又は事実認定を非難するに歸着し上告適法の理由となすに足りない。のみならず犯行の日時は、元來罪となるべき事実そのものではなく、單に犯行の情況又はその同一性を示すべき事項たるに過ぎないのである、然るに論旨は唯原審が本件犯行の日時を昭和二二年一〇月二九日午後一〇時頃から翌三〇日までの間と認定したのに對し、右は同日午後一二時前後と認定すべきであったと非難するに過ぎないのであるから、假りに原判決に所論のような事実認定上の過誤があったとしても、その一事だけで直ちに原判決に上告理由たるべき法令違反ありとはいい得ないのである。論旨は採用の限りでない。

よって舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 齋藤悠輔)

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